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私はブーツを脱いで裸足になった。
タイツは足首のところまであって靴下は穿いてない。
なんかブーツを脱いだときに、ちょっとした歓声が上がったのは気のせいよね…
うう…っていうか普通に恥ずかしくなってきたわ。
顔が隠れてなかったらこんな事できないわよ、もう……
それより問題はこっち。
視線をチラッと下に向けると、うわぁ…さっきよりお魚がいっぱいいるわ…
さっき手を入れたときの感触が甦ってきて、背筋にゾクッ寒気が走る。
でも、やるしかない。もう後には引けないわ。
グッと手を握り、椅子に座る。
「さあ、改めて第2ラウンド開始といきましょう! シルバーレッドさん、どうぞ!」
ゴクリ、とのどが鳴る。
うようよ動く魚の群れの中に、そーっと両足を突っ込んでいく。
水面に触れるか触れないかの所で、さすがに躊躇って、足が止まってしまう。
でも、いつもの強気の影響か、あまりにも水面に近いところで止めてしまったせいで予想外のことがおこった!
「ひっ…!!?(……あっ!)」
「「おおっ!!?」」
せっかちな魚が水面から顔を出して、私の足の裏を突っついた!
いきなりの不意打ちに思わず声を出してしまった…!
皆が息を飲んで私に注目している。
そりゃそうよ! 戦隊者のレッドから出た声が女の子が出すような、引きつった悲鳴なんて…!
「お、おお~っと!レッドの鉄仮面がとうとうはがれた!? これでリアクションが得られるか~!?」
泉のこの一言がなかったら、私はそのままいつまでも恥ずかしさで固まったままだったろう。
我に返った私はこの怒りの矛先を、不意打ちをしてきた魚に向けた。
「(不意打ちなんて卑怯よ!…もう声は出せない、いや、出さない!これは魚が私に売った宣戦布告なのよ!)」
変なスイッチが入ったのは自分でも分ったけど、もうこうでもしないとやってられないわ!
一度上げた足をもう一度中に突っ込んでいく。
「(大丈夫、大丈夫…分っていれば耐えれる。分ってさえいれば……んんっ!!)」
足を中に入れたとたん待ってましたというばかりに魚が群がってきた!
足の裏はもちろん、足の甲、足首にまで絡み付いてくる~っ!!
「(ダメ!ダメダメダメダメ~ッ!! くすぐったい!ムリ!くすぐったいぃっ!!)」
せめて足の裏だけでもくすぐったさが和らげば……
そう思って足を水槽の底につけようとしても、意地悪なことに足は地面についてくれない!
水の中で無防備にさらけ出された足の裏をただ魚達の思うままに突っつかれるしかなくなったとわかると、一層足の裏のくすぐったい感覚が鮮明になってくる。
「(~~~~~~っ!! んんっ!!んむっ…うっ!! うむふふふふふふふ…っ!)」
剣道をやっているから、多少足の裏は大丈夫だと思っていた私が甘かった…
足の裏全体に群がる魚達が、一斉に触るか触らないかのタッチでつんつんつついてくる!
そのソフトタッチが、足の裏のまだ比較的やわらかい所をピンポイントで刺激してきてっ、全く未知数のくすぐったさを絶えず私の体に送ってくるのだからたまらない!
もうすでにっ、口の端から少し息が漏れてしまうのを耐えることができない!
「(ひいっ!うぁっ…!ダメッ!な、何でそんなとこっ~~~~!!)」
いくら鍛えても硬くはならない足の指の間に、ぐりぐりと頭を突っ込んでくる魚がっ!すっごくくすぐったくてっ!本当にこれはっ…ダメみたいっ!
「(~~っくっくっくくく!早く!早く離れて!お願いっ!いやぁ!!)」
足の裏側からだけじゃなく、足の甲のほうからも魚が突っ込んできた!
「(もうっ、やめて!やめなさい!お願いだから~っ!!)」
これ以上やられるともうダメだと感じた私は、抵抗の手段として足の指をぎゅっと曲げた。
指の間の魚達は驚いて逃げてくれたみたいだけど、その逃げたのは別の場所へ移動するわけで…
「(んっ!!そ、そんなとこ…っ! や、やめてっていってるでしょ!もうっ、ほんとっ!くすぐったいんだって~~~っ!!)」
溢れた魚達がこんどは足の側面に集まってつっついてきた!
これが、もう予想以上にくすぐったいっ!
普段意識もしていないところだから、対策も何もあったものじゃないわ!
常に新しい刺激を送り込んできて…もう、これ以上…っ!
「(へっ?……え!? んくくくくくくっく!?)」
足の側面に意識を集中しすぎて、ほかの所に意識が回らなかった。
足の甲にできた骨のの筋に沿って上下に動く魚と、くるぶしの周りを回るように責める魚から送られてきたゾクゾクするような刺激が体中を電流のように駆け抜け、私の体から力を奪っていく。
「ふぁっ……うひゃははは!!」
そんな刺激に口をたらんと開けてしまったところに、追い討ちの足の裏つんつん攻撃。
魚たちの緩急をつけた波状攻撃にまたしてもやられた!
『なあ、今の女の子みたいな声じゃなかったか?』
『んなわけねぇだろ…女だったらあんなスーツ着れねぇって…高い声が出る男の子なんだろ?』
今の声で周囲がざわざわとざわめきだす。
口は根性でなんとか閉めなおし、うっすらと開いた目で周りを見渡す。
チラッと見えた笑顔の愛歌さんは、もう幸せこの上ないという表情をしていた。
泉は困ったような驚いたような顔をしていて、理沙は一瞬驚いた後、にやりと口元を吊り上げた。
うう、まさか理沙にばれちゃった?
歩…そう歩は!?
……歩は顔を赤くしてぽーっとしていた。
えっ!?私、顔を赤くするような動きしてた!?ちょっ!えっ!?
「はい、そこまで~~~~っ!!!」
ざわめきの中に泉の明るい声が響き渡った。
「レッドさんもお魚さんもありがとうございました~!! さあ、これまでの反応から、答えが分かった人~?」
「…はっ、ハイ!」
「はい、歩ちゃん!」
「えっと…あれよ。ほら!テレビに出てた、人の皮膚を掃除する魚!」
「あ~…もうそれでいいや!正解!」
あ、歩~~ また答えてくれたのね…
「どこで分ったのかな~?」
「レッドさんがくすぐったそうにしてたのと、さっき魚っていったし…」
……またそのオチなのね。
でも、正直終わってくれてホッとしたわ。
もう後は笑うしかなかったかもしれなかったから…
「では、シルバーレッドさん!今日はどうもありがとうございました!」
そういって泉が手をあげると、突然破裂音がして、白い煙幕がステージの下からでてきた
「そのまま、じっとしててくれ」
いつの間にか隣にいた理沙が耳打ちしてきた。
言われたとおりにしていると、いつの間にかステージの外にいた。
「お疲れ様、シルバーレッドさん」
意味ありげな笑みとセリフを口にしながら再びステージに戻った理沙と入れ違うように現れたのは、微笑をたたえた愛歌さんだった。
「愚痴なら更衣室で聞きますよ。見つからないうちにいきましょう?」
さすがに私が何を言いたいかわかっていらっしゃる。
溜息をつきながら立ち上がると、ふと足に違和感を感じた。
「あら、裸足のまま歩いてしまうと、またお魚さんたちに掃除してもらわなきゃいけなくなるわよ?」
――たちの悪い冗談です。
そう胸中で呟くと、私はいつのまにか足元に綺麗にそろえられていたブーツに手を伸ばした。
――続きへ