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クイズ ティックル アカデミー その3

2009.05.14
ヒナギクさんSSの続きです。
笑うのはほとんど愛花さんですが。
足りなかった爆笑分を補給。

最初のお話へ
1つ前のお話へ



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

祭りの喧騒から少し離れた、神社の奥に更衣室はある。そこで私は一言も発せず黙々と着替えていた。

「えっと…ごめんなさいね?」

(プイッ)

「確かに私も調子に乗りすぎたわ…」

(ツーン)

「……あっ!あんなところに水槽が!」

(ビクッ!!)

思わずスカートを穿く途中だった手が止まった。
愛歌さんのくすくすという笑い声が耳につく。
少し涙目になりながら、私は再び黙々と着替えを再開する。

私もさすがに怒っているのだ。
少し寂しい思いでもして反省していてください。

スカートを穿き終え、次は上。
シャツを脱ぐため服の下を掴んで引っ張りあげる。

二枚一緒に脱ごうと欲張ったのがいけなかったのか、引き抜こうとして肩のところでつっかえた。
無理やりにでも抜いてやろうと力を入れた瞬間、突然脇腹に人の手の感触が…!?

「ひゃっ!?なっ…や、やははははははは!!」

シャツを脱ごうとして万歳して全く無防備な脇腹を素肌の上からぐにぐにともまれる感触。
しかもシャツで前が見えなくなってるから余計にたちが悪い。

「あはははははは!!あ、愛歌さん!やめてっ、ひゃっひゃははははは!!」

さっきの魚たちとは比較にならないくすぐったさに、笑いが止まらない。

「お肉、つまめないわね…ずるいわ~」
「いひっ!!や~っはっはははははははは!!も、もう、だめですってぇ!!」

足は自由だったことが唯一の救いだった。
愛歌さんから離れ、脱ぎかけたシャツを下ろすと愛歌さんをキッと睨みつける。

「もう!さっきから何なんですか!くすぐったいことばっかりしてきて! あの魚たちも、くすぐったいって分っててやったんですよね!?」

溜まっていた不満を一気にぶちまけると、急に愛歌さんはしゅんと体をすくめた。

「だって、ヒナちゃん最近難しい顔ばっかりしていたから、元気付けようと思って……」

……確かに、最近色々悩んでて、笑えてなかったかも知しれないわ。
私も怒鳴って悪かったかも…そう、口を開きかけたら

「それに……笑ったり堪えたりするヒナちゃん、すごく可愛いんですもの♪」

普通なら、いつもの悪い癖で済ませられるその言葉は、今回に限って私の堪忍袋の緒を切る刀となった。

「というのは冗談…って、えっ…やっ!?ちょっと、ヒナちゃん!?」

こっちからつかつかと歩み寄って愛歌さんの両手を持ち上げ、それを片手で束ねて壁に押し付ける。
愛歌さんはさすがに困惑したのか、体を振り回して抵抗しようとしたけど体の弱い愛歌さんの抵抗では私の手はびくともしない。
外から見ると危ない光景に見えるかもしれないけど、今はそんな事どうでもいい。

「ヒ、ヒナちゃん、ごめん!ごめんって!今回は本当に私が悪かったから…」
「私も……」

愛歌さんの懇願を打ち切って口を割り込む。
静かになった空間で愛歌さんは緊張した面持ちで私を見つめてくる。
私がぎこちなく笑顔を作ると「ひっ!」と短い悲鳴を上げる。
私の笑顔は可愛いんじゃなかったんですか?

「私も……愛歌さんの笑顔が見たいです」

自由な方の手を、わきわきと動かす。
愛歌さんはそれを見て必死に首を横に振るけど、ダメ。

私の手ががら空きの脇腹を掴むと、それだけで愛歌さんの顔が引きつった笑顔にゆがむ。
「ひっ…!ヒ、ヒナちゃん…っ!くくくっ…ほんとに謝るから…だっ!だから、それだけはっ…!!」
「ダメです♪」

私はあてがっていた手をマッサージするようにぐにぐにと動かし始める。

「ひあっ…!! あははははははははは!いや~っはっはっははははははははっ!! やはっ、くすぐったい~っ!!」

大声で笑い悶えあてがわれた手を振りほどこうと左右に腰を振る姿は、いつものおしとやかな愛歌さんとはまるでかけ離れたものだった。

「(なにこれ、かわいい……)」
子供のようにじたばたしている愛歌さんを見て、ついそう思ってしまった。

「ひゃあああっはははだめははははっは! ヒナちゃ、ちょっ!そっちはほんとにやめっ、ん~っくひひひひひひ!!」

私は手を徐々に上のほうへ、つまり腋の下のほうへ近づけていく。
それにつれて反応と抵抗が大きくなっていく愛歌さんに、私の嗜虐心がくすぐられる。

「腋の下、やっぱり弱いですか?」
「ひゃっひゃははははは! そうっ、ひははははは!だからぁああっははははは! もうやめっ!!もうやめ~っはっひゃひゃぃぃぃぃぃぃっ!!」

顔に涙を浮かべて必死に首を振る愛歌さん。
私はさすがにちょっと可哀相になってきてくすぐる手を止めてあげた。
愛歌さんはそれでへたり込み、私もそれに合わせて覆いかぶさるような形になる。

「……反省しましたか、愛歌さん?」
愛歌さんは荒い息を吐きながら、首を縦に振った。

「はぁ…はぁ…お、思った以上に…きついわね、これ……ご、ごめんなさいね…」
「次また羽目をはずすようなことがあったら、またこれですからね?」

私が目の前でわきわきと手を動かすと、愛歌さんは顔をゆがませて脇を閉じながら頷く。
もうそれだけでもくすぐったいのだろう。
終わってみればちょっとしたふざけ合いだった。
たまにはこんなのもいいかもしれない。

そう微笑みかけようとすると、
「ここに戦隊物のコスプレをしたヒナがいるって本当か~~~っ!!」


一瞬にして凍る空気と表情。
なぜか唐突に美希が入ってきたのだ。あそこにはいなかったはずの美希が。

暫く美希と私が見詰め合っていると、いきなり美希の顔が耳まで真っ赤になっていく。
ふと、私と愛歌さんの位置を考えてみる。

さっきのくすぐりで服は乱れ荒い息を吐く愛歌さん。
その上に手をわきわきさせながら覆いかぶさる私。


「「~~~~~~!!」」


声にならない悲鳴は私と美希のどっちのものだったか、とにかく私は愛歌さんの上からぱっと飛びのく。

「ヒ、ヒナ……」
「美希!こ、これはちがくて、さっきまでくすぐってただけで…!」

「……ならそれでもいい」
てっきりドン引きされるものだと思っていたけど、美希は逆にぶつぶつ言いながらこっちに向かってくる。

「…それでもいいから私にもやっ、ふばぁ!」
飛びついてこようとした美希が、ゴンという鈍い音と共にどさっと落ちた。
そのうしろから現れたのはまだ巫女服姿の理沙だった。

「まったく…危ないところだったな、ヒナ」

急な展開に急がついていかない。
頭に疑問詞を浮かべていると、理沙が説明しだした。

「神社にいなかったはずの美希が走っていったからもしや、と思ったんだよ。美希なら大丈夫だ。このピピルピルピルなお払い棒は対象を傷つけることなく気絶させるアイテムだからな」

疑問詞が余計に増えた。
結局わけが分らない。

「まとめるとだな…多分、愛歌さんが美希を呼び出しでもして、この光景を見せたかったんじゃないかな?ッてことだ」

振り向くと、引きつった顔の愛歌さん。

「本当ですか?」
「……ご、ごめんね。本当なのよ…」

さっきしぼんだはずの堪忍袋は、袋ごとビリビリに切り裂かれた。
「……理沙。さっき私が入れられた水槽と魚、まだあるわよね?」
「ふむ……今回はさすがにヒナが可哀相過ぎるかな。協力するよ」

いつもの不敵な笑いを浮かべる理沙と、引きつった顔の愛歌さん。
そして、満面の笑みの私はお互いの顔を見合わせて笑いあった。

―――

「理沙は、あれやったことあるの?」
境内の中を歩きながら、私は理沙に尋ねた。

「ん?ああ、ちょっと前にやったな。流行のものをすぐにできるのが金持ちの特権というものだろう? 私達みたいな好奇心旺盛な奴ならなおさらさだな」
「やっぱり、くすぐったかった?」
「まあ、最初はそうだったが、慣れたら結構気持ちよかったぞ?」
「私は慣れれる気がしないわ…」
「泉もそうだったな。何回やっても十秒と持たなかった。部活に動画もあるぞ?アレのお風呂バージョンに泉が入った奴が」

お風呂…全身アレにつつかれるとか、地獄以外の何物でもない。私はぶるっと身震いする。

「ところで、愛歌さんはいつ回収するんだ?」
「私が露店を楽しんだら戻ってくるわ。それまでには慣れてるんでしょう?」
「愛歌さんが、泉やヒナみたいに敏感だったら災難だろうな……」

どこか遠い目をして、理沙はポツリと呟いた。

―――

「んひぃっ!? ひゃああああっははっはははは!! ダメ!そこダメ!んん~っふふふふふっ!!」

その頃、愛歌は足の裏をドクターフィッシュにつつかれて、理沙の懸念通り笑い悶えていた。

「ひ~っひひひひダメははははは! 指の間にっ、入らないでっ!やめてってばああぁっ!」

手と足を椅子にに縛られ、足を引くことも、体を動かすこともできぬまま、無慈悲な魚たちに足の裏をつつかれる。

「ヒナちゃああああっははははっはは!! はやくひ~っひっひっひひひひ!早く戻ってきて~っ!!あにゃ~っはっはははははっははっは!! 死んじゃうってぇぇぇぇ~~っっへっへっへへへへへ!!」

愛歌は、その後ヒナギクが戻ってくるまで、ずっと笑い続けていたという。

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プロフィール

わかしら

Author:わかしら
小4のときから若白髪。金とか赤とかもたまに見かける。
くすぐり歴はもっと長い。